妄想台風(泣かないで)
台風一過。
昨夜とはまるで違う世界。爽やかな朝。
「姫、大丈夫だったか?」
「うん、平気だよ」
「目が腫れてるよ。どうした?泣いたのか?」
「平気だって」
「嘘が下手だな。何故泣いた?」
「大丈夫だって言ってるじゃん」
「お兄ちゃんには何でも話してくれるんだろ」
「家で喧嘩して一人で泣いてた」
「またか?」
「くだらないことで喧嘩して怒鳴られたの」
「くだらないことなのに、怒鳴るのか」
「情けなくて泣いた」
姫は僕の前では絶対泣かない。
これから先も多分泣かない。
いつも笑顔を振りまいてくれる。だから、姫が泣く顔なんて想像もつかない。
そんな姫を泣かすようなやつは許さない。
姫にそんな理不尽なことをするやつは許さない。
「キスしたら直るか?」
「うん」
姫を守りたいと思う。
全力で守らなければ僕の生きている意味なんてない。
姫を笑顔にする。その笑顔で僕はいつも救われる。
あの笑顔を見るために僕は生きている。
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